他人の年収というのは、誰でも気になるところだろう。個人の年収を細かく知ることは難しいが、業種別ではおおよその値を知ることができる。国税庁は毎年「民間給与実態統計調査」を実施している。この調査では、一人あたりの平均給与や、業種別の平均給与額などが記載されている。今回は、この統計結果をもとに、業種別の年収ランキングを紹介する。
■「民間給与実態統計調査結果」とは?
「民間給与実態統計調査」は、1949年から国税庁が毎年実施している統計調査だ。民間企業などの年間の給与実態を明らかにする目的で行われている。また、租税収入の見積もりや租税負担の検討など、租税政策に関わる資料としても用いられている。調査対象は、源泉徴収義務者(民間の事業所)に勤務している給与所得者である。毎年12月31日現在を基準として調査が行われている。
「平成27年分民間給与実態統計調査結果」によれば、2015年の給与所得者数は5646万人と、前年比で54万人の増加(1.0%増)となっている。民間の事業所が支払った給与総額は204兆7809億円と、前年比で1兆7000億円の増加(0.8%増)となっている。給与所得者の増加に伴い、給与総額も増加していることがうかがえる。
ただし、上記の給与所得者には臨時的に雇用されたものを含んでいる。1年を通じて勤務した給与所得者についてみると、給与所得者数は4794万人と、前年比で38万人増加(0.8%増)しており、長期雇用の増加が確認できる。また、平均給与額は420万円と、前年比で5万4000円の増加(1.3%増)となっている。
男女比をみると、男性が2831万人(前年比26万人増(0.9%増))、女性が1963万人(前年比11万人増(0.6%増))となっている。平均給与額は、男性が521万円(前年比6万1000円増(1.2%増))、女性が276万円(前年比3万8000円増(1.4%増))となっている。
また、正規雇用者の平均給与額は485万円と前年比7万2000円の増加(1.5%増)、非正規雇用者は171万円と前年比8000円の増加(0.5%増)となっており、正規雇用者と非正規雇用者では平均給与額に大きな差がみられる。非正規雇用者の平均給与額が低いのは、時短勤務の影響や、賞与の支給が無い(あっても低額)などの理由が考えられる。そもそも労働時間が異なるため単純に比較することはできないが、正規雇用者の方が給与水準が高い結果となっている。
■業種別年収ランキング発表
さて、「平成27年分民間給与実態統計調査結果」で集計している14業種について、平均給与額が高い順にランキングをしていくと、以下のようになる。
第1位 電気・ガス・熱供給・水道業:715万円
第2位 金融業・保険業:639万円
第3位 情報通信業:575万円
第4位 学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業:501万円
第5位 製造業:490万円
第6位 建設業:468万円
第7位 複合サービス業:425万円
第8位 不動産業、物品賃貸業:424万円
第9位 運輸業、郵便業:414万円
第10位 医療、福祉:388万円
第11位 卸売業小売業:358万円
第12位 サービス業:345万円
第13位 農林水産・鉱業:306万円
第14位 宿泊業飲食サービス業:236万円
前述の通り、2015年の給与所得者全体の平均給与額は420万円だが、今回は電気・ガスなど光熱費に関わる業種の平均給与額が1位にランクインした。しかし、2016年4月から電力やガスの自由化が開始されたことにより、同業界の給与水準の今後の動向が注目される。なお、第2位は金融・保険業、第3位は情報通信業であった。
携帯電話やスマートフォンなどは、いまや日常生活には欠かせないものとなっている。家庭内の支出においても携帯電話やスマートフォンの料金が大きな割合を占めていることからも分かるように、情報通信業の平均給与額も業界の発展に連動してアップしていると推測される。
■景気回復により年収は上がっていくか
上場企業の収益予想などを確認すると、景気回復の傾向がみられる。景気が回復傾向に向かえば、企業収益も改善していくことが予想される。賃金の伸びが鈍いと言われている昨今だが、企業の収益増加は、いずれ個人の給与にも反映され、個人型確定拠出年金(イデコ・iDeCo)への加入増加や掛金額の引上げにつながる可能性も高い。政治情勢などとあわせて、景気の動向にも注目していきたい。
(提供:確定拠出年金スタートクラブ)